緊急企画
THE CAPSULE

Prologue
われわれはとある怪情報をキャッチした。現代社会のサラリーマンの心のオアシスなるものが存在するというのだ。そこで、われわれは調査団を組織し、実態の究明に乗り出した。まず調査にあたり街頭インタビューを実施したのだが、ここで耳寄りな情報を持つ小市民 Ay*mi 氏から有用と思われる情報を得られたので一部をここに掲載する。


A 氏談:
いやー。良く使うんですよねー。いえね、家が遠いもんですからね、あ、これギャグじゃないよ。え?気づかなかった?ああ、いいんだ。それでさ、そんなわけでさ、ちょっと残業しようもんならすぐ電車がなくなっちゃうわけよ。いま大森でしょー?俺千葉市に住んでるんだけどさ、千葉市ったって広いわけよ。ねえ、あんた、わかる?でさ、俺っちなんか京成沿いなわけ。京成知ってる?そーそー、よく人身事故起こしてるよね。そんでさ、上野が始発なんだけどさ、これがまた上野駅最終が12時前なわけ、わかる?んで電車に間に合ったとしても駅からのバスが10時で終わりなんだよね。土日祭日なんかあんた9時よ?9時。こんなのってねえよなあ。こちとら高い市民税払ってるのになんでこんなにインフラ悪いわけ?え?ああ、愚痴なんか聞きたくない?そらそうだわ。でな、仕方なく会社に泊まるかホテルに泊まるかを選択せざるをえないわけでしょう?ねえ?だからさ、会社に泊まるなんてさあ、できっこないじゃない。絶対仕事しちゃうよね。でも休まないとこっちがいかれちゃうんだからさ、結局ホテルに泊まらざるをえないわけよ。で1時2時まで手軽にチェックインできるところなんてカプセルしかないわけじゃない。だってあんた、最初から遅くなるってわかってるんだったらホテルの予約でもしとけばいいと思うだろうけど、そうはうまく行かないのが人生ってもんよ。第一そんな余裕があるならとっとと帰るね。でしょ?わかる?だからさ・・・


支離滅裂になりそうなので最後は割愛させていただいたが、大体読者にも彼のいいたい事はわかると思う。つまりカプセルホテルとはビジネスマンの心の友であるという事実である。カプセルに目覚め、カプセルに休む。蓋し人生の深さが垣間見えるようではないか。そんなカプセルホテルこそが病める現代社会を支えるサラリーマンの心のオアシスと呼ぶにふさわしいとわれわれは確信し、本格的な調査に着手する事にした。


Investigation capter 1 (Entry)
カプセルホテルのチェックインの方法は独特である。まず黙って靴を脱ぎ、下駄箱に入れた後にその下駄箱の鍵を持ってフロントにチェックインの手続きにゆくのである。チェックイン時にどこのカプセルでも同じなのだが書類に住所氏名などをかかなくてはならないのだが、これはほとんど何もかかなくても大抵は黙ってとめてくれるのである。相場は都心で4,000円内外である。ただしサウナなどに別料金を取る場所もあるが、そういった所はまれである。そんなこんなで、われわれの正体を見破られずにチェックインする事は容易である。しかしここで正体を見破られたら最後、オアシスが一瞬にして地獄と化してしまうに相違ないのである。容易であるとはいえここは慎重を期さなくてはならない。ここでチェックインに成功するとカプセルを割り当てられ、ロッカーの鍵を渡される。この鍵は、今夜のわれわれの全財産を守ってくれる唯一の頼りである。十分に慎重に扱わなくてはならない。そして、われわれはカプセルホテルのエントリポイントともいうべき更衣所にたどり着き、撮影する事に成功した。以下はその映像である。
ロッカーはサラリーマンの心のともであることを証明するかのようにスーツとパンツが下げられるようなサイズに設定されており、場所効率の確保と両立するように特殊な形状をしている。大抵のカプセルは上下二段の構造となっており、ロッカーも同様であるのは興味深い。手前にある籠はロッカーに予め用意されているタオルや寝間着を翌朝放り込むための籠である。下着などはくれるところもあるし購入するところもあるが、ほとんどは自分で購入しなくてはならない。サラリーマンのためにワイシャツなども販売されている。これは都心のカプセルならではのサービスという事が出来るだろう。ここでわれわれは準備を整え、ついにカプセルが並ぶという伝説のカプセルルームに潜入を開始した。


Investigation capter 2 (Capsule)
われわれはついにカプセルルームへの潜入に成功した。まずは以下のスチルをご覧いただきたい。
両者で角度が変わっているのはお許しいただきたい。これがカプセルルームである。まさに蚕棚と呼ぶにふさわしい威容を誇っている。ブラインドが降りているところは既に誰かが入っているところである。そして 1 つのカプセルは以下のようになっている。
上のスチルは入り口からカプセルの中を望んだ映像である。この中は意外に広く、あぐらを掻いて座る事も出きる。このスチルの手前左上にテレビがあり、右奥には鏡、左奥に後程触れる集中コントロールパネルがある。
上のスチルは横になった場合に視界にどのようなものが入ってくるかのシミュレーション映像である。テレビが非常に見やすい位置にあるのがお分かりになるだろう。良く考えられているものだと感心させられることしきりである。
これがこのカプセルを支配する中央コントロールパネルである。ここから照明、テレビ、目覚しなどすべての制御を行う事が出来るスグレモノである。情報の集中管理を実践しているものと思われ、非常に高度な設計思想が伺える。当然、緊急事態発生時もボタン一つで通報する事が出来、宿泊者の安全に気を配っている事が良く理解できて頼もしいかぎりである。このパネルの上には操作方法と緊急時の避難通路がかかれたシールが貼られ、ここからも情報の集中の実践が定着していることを窺い知る事が出来る。


Epilogue
われわれはついにカプセルの実態の解明に成功し、多大な功績を上げたと自負している。われわれの調査はサラリーマンだけでなく、これからの都市生活者にとって非常に有用であると思われるがいかがであっただろうか。さて、そろそろわれわれの調査も終わりに近づいてきたようだ。読者のよろしきを得て、われわれは眠りに付く事にする。おやすみなさい・・・


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